2008年07月05日

医療の現在 炎症

前回、“病勢”と“回復力”という言葉を使いました。医学領域での専門性から逸脱した用語で、専門家にとっては胡散臭い用語だと感受されることは覚悟して少し敷衍してみます。
“炎症”という医学・医療でのキーワードがあります。古くから熱感、発赤、疼痛、腫脹の四つの徴候で特徴づけられてきました。ある部分が赤くなり、触ると熱を持ち、腫れていて痛みを持つということです。クラシックな“病気らしい病気”です。
以前に遡ると、外傷、骨折などの外因性疾患(外科領域)があり、他方内科領域では、炎症、腫瘍(悪性のものがガン)、血管障害があり、これで殆どの病気が尽くされていた時代です。こうした時代、炎症は病理学での主要な関心事でした。
時移り、細胞レベル 分子レベルで、研究されるようになった現代でも、炎症は病理学の大きなテーマです。門外漢ですが、素人的に傍観すると、炎症を惹起しようとする因子(代表は病原性微生物)とこれを排除しようとする因子(免疫関連細胞)の“鬩ぎ合い” そのプロセスが“炎症”という古代から観察、記述されたのではないかということです。
こうした炎症の特徴は①ダイナミックに動いていること。②善悪二元論では、殆ど理解できないこと③動きがどの方向に向かうかは究極的にはブラックボックスであることではないかと、とりあえず考えます。
①は、病原性微生物が感染したので、宿主であるヒトが一方的にやられるというものではなく、やられたらやり返すといった頻繁な応酬なプロセスであるということ
②はヒト攻撃する軍勢(例えば細菌)と守る軍勢(例えば血球)は、悪と正義のように予め二分されているのではなく、攻撃している因子が突如守る側についたり、守る側の因子が突如攻撃する因子に寝返ったりといったことが頻繁に生じる複雑なプロセスであるということです。
③医療的介入をした時 良くなった、変わらなかった、悪くなったと3通りあります。このどこに帰着するか、何故そうだったのか 古代から医学・医療の一貫したテーマですが、どこに帰着するかは、最終的には、わからないということです。明らかな薬の誤用などは除いて。
こう考えていくと、“病勢”とか“回復力”とかの日常的用語は考える場合ある程度有用だと考えているのです。



Posted by 杉謙一 at 05:58│Comments(0)
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